発達サポートの歴史~法律の制定~
こんにちは!スマイル先生です。
発達が気になる子どもたちやその子を支えるご家族の皆様の役に立つ情報をお届けします。
お子様の発達について悩んでいる保護者さんが、最近とても増えています。文部科学省のある調査によると、「発達障がい」といわれる児童の数は、2006年には7000人余りでしたが、2020年には9万人を超えたともいわれています。数字だけを見ると、たしかに「増えている」といえます。
でも、思い出してみてください。「あの子、じっとしてるの苦手だよね」という子、周りにいませんでしたか?発達障がいの子が「増えた」というよりは、「よく耳にするようになった」と言った方が正しいのかもしれません。つまり、認知度が上がったのです。
では、なぜ認知度が上がったのでしょうか?その理由の1つに、「発達障がい者支援法」という法律の制定が関係しています。
● 法律制定の目的は?
「発達障がい者支援法」は、発達障がいのある人の早期発見と支援を目的として、2005年に施行された比較的新しい法律です。それまで自閉症やアスペルガー症候群、多動などの特性を持つ人たちは、さまざまな場面で大きな困難を抱えているのにも関わらず、適切な支援を受けることができませんでした。この法律の制定により、「発達障がい」という言葉が定着し、支援やケアの対象であるという認識が社会に広まるきっかけの1つとなったのです。
この法律では、「早期発見」、「支援センターの設置」、「自立および社会参加に対する支援」などが明記されています。その後、2016年の改正により、「社会的障壁を除去すること」や「切れ目のない支援をすること」、「教育現場で支援計画を一貫すること」などの内容が追加されました。なんだか難しそうな内容ですが、簡単に言うと、「発達障がいをもつ人が生活しやすい環境を、社会全体でつくっていきましょう!」という法律なのです。
● 法律制定によるメリットは?
この法律の制定により、「発達障がい」という言葉がメディアでも取り上げられるようになり、広く知られるようになりました。それまでは、「本人の努力不足」とか「親のしつけの問題」などと思われていた子どもの行動が、実は生まれつきの特性であるということが知られるようになったことは、子どもやその家族にとって大きな意義のあるものでした。
しかし、教育現場では早期発見のために、気になる子に対しては保護者へ専門機関での診断を促すようになりました。早期発見・診断することには、賛否両論ありますが、大切なのは、「診断されることが子どもにとってプラスになるか」ということです。その子が楽しく生活しているのであれば問題ありません。しかし、その子がその特性のために生きづらさを感じているのであれば、支援するきっかけを与えてあげるのが周りの大人の役割です。
診断名はその子の特性を理解するきっかけにすぎません。診断名が付くことによって受けられるサポートもたくさんあります。実際、法律の制定により、支援施設が増え、適切な支援が受けやすい環境が整ってきました。学校教育でも、個別に支援計画や指導計画を立てて、その子に適した指導が工夫されるようになりました。それまでは、「集団授業は辛い」と感じていることが多かった子も、その特性に応じて適切な指導・支援を受けられるようになったのです。
● まとめ
発達障がいに悩む方々が生きやすい環境を整えることは社会全体の責任であることが法律で定められています。この法律をきっかけに、発達サポートに対する理解が進み、それぞれがもっと生きやすい世界になっていくといいですね。
参照:文部科学省「発達障害者支援法」 厚生労働省「平成29年版障害者白書」